「前歯のデコボコを治すため、床矯正(しょうきょうせい)という治療を勧められました。」
お子さまの歯並びが不ぞろいなのを心配し、歯列矯正のために歯科医院を受診した保護者さまが、床装置を用いた矯正治療法を勧められたというお話をよくうかがいます。
床矯正とは、取り外しができる床矯正装置を使って歯並びを整えようという治療法のことです。
他院で勧められた保護者さまから相談を受けることも多いのですが、私も含め矯正歯科専門医の一般論として、床矯正治療は、患児の条件によっては効果的な治療ですが、期待通りの効果が得られるケースは多くないのが実情です。
また、「歯を抜かない治療だから』と言われ、取り合えずやってみましょうと、実際に始めてみたものの、患者である子供の治療負担(毎日長時間着用)が大きいので、使えないことも多々あるようです。
Case 出っ歯、前歯の凸凹
初診時、11歳。9歳時に小児歯科で床矯正を勧められ始めた。1年以上通院したが、全く効果が見られないように感じ当院へ兄の治療とあわせ相談に来られました。聞き取りの結果、床装置はあまり使えておらず、使ったり使わなかったり。
初診時の矯正検査から骨格が標準よりもやや小さいこと、歯は標準サイズですが親知らずも含めすべての歯があることより、今後成長に伴ってさらに歯の混みあいが大きくなることがわかりました。
と言うことは、もし床装置を使って歯列を広げたりしても、生えきらない上に、より出っ歯になってしまう、正しく咬めない(開咬という不正咬合)ことが生じると予想されました。この場合、歯肉退縮のリスクも高まります。
そこで、床装置を使うことは即刻やめてもらい、歯列を骨格に合わせた大きさにするために小臼歯の抜歯を行いマルチブラケット装置を用いて歯列矯正治療を2年間行いました。
口元の突出感の改善、歯列、咬合ともに整いました。この年齢ではブラックトライアングルの発生も成人にくらべ少ないと言われていますが、全く生じなかったのも良かったと思います。
保護者さまより床矯正についてよく聞くこと
「床矯正装置を使ってあごを広げる」と言われた。
Answer: あごの骨格自体は床矯正の装置では広がりません。歯は歯槽骨という骨に埋まっており、この歯槽骨は顎のベースとなる骨にのっかっています。歯が内側に向かって倒れているような場合には歯槽骨も歯と一緒に倒れ込んでいる場合が多く、床矯正装置を用いることで倒れ込んでいる歯の矯正移動にともなって周囲の骨も若干の好ましい移動変化が生じると言われています。しかし、床矯正はあごの骨格自体を広げる治療法ではないため、過度に行えば歯を骨の外に押し出す結果にもなりかねません。その場合、歯茎が下がって歯根が露出したり、歯の神経が死んでしまったりするおそれがあります。
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